サード・アイ(第三の眼) ~2~
その子は本殿へ上がる階段まで来ると
くるりと向きを変え、階段に腰かけた
デイパックの中をゴソゴソしていたと思ったら
菓子袋を二つ取り出した
すると
“”ボッ“”と、その子より二つほど下の階段に「疾風」と「隼」が現れ
物欲しそうな眼付きでお座りをしている
その子は菓子袋の封を開けて
「疾風」と「隼」の前に置いた
「待て、待て、マテ・・・」と、その子が制止しようとするが
二体?は待てずに、袋に口を突っ込んでボリボリと食べ始めた
「あ~ぁ」「お前らは相変わらず品がないな~」とその子がつぶやいた
やがて二体?が食べ終えると、
その子は
「前払いで今日の報酬は払ったから、よろしくな!」と云い
「疾風」はゲップをしながらうなずき
「隼」は縦に首を振った
それから数時間後
一日に二回
夜明け前の夜空が青から赤に変わる一瞬と
暮れなずむ夜の帳が降りてくる刹那に
人が暮らすこの世と
人では無い彼らが住むアチラとがつながる
「Blue moment(ブルーモーメント)」と
呼ばれる“”時“”がある
人里を見下ろす山の頂(いただき)から
秋の乾いた風がピューっと吹いた
「来るぞ!」と、疾風が云った刹那
ヒトの眼には見えない風の回廊(コリドー:通り道)を
神社の屋根にある「鰹木」(かつおぎ:屋根の上に乗っている丸太のようなもの)
に向かい、「隼」の張った結界を突き抜け「何か」が飛んできた
「何か」は銀杏の枝を大きく揺らし
次に鳥居に飾ってある「しめ縄の玉垂れ」を揺らすと
そのまま境内を出て参道を一気に下ると麓の街まで駆け降りた