サード・アイ(第三の眼) ~1~
気象庁が統計を取り始めて以来の
気温に関する記録が毎日各地で更新される異常なまでの暑さは
葉月(8月)から長月(9月)に変わる頃には収まるだろうという予想は外れ
秋の彼岸を過ぎた頃に少しばかり落ち着き
今年の秋は短いか?ひょっとしたら来ないのではないか?と思っていたら
暦が神無月(10月)に変わる頃には、例年通りの気候に戻った
稲刈りが終わった田圃では、蝗(イナゴ)が飛び跳ね
農家の庭先の柿の木は
あまりの寒暖差で、ついこの間までは青かった実は一気に橙色に色づき
秋の味覚を楽しもうとする烏が狙っていた
遠くの中学校で行われている運動会の歓声が、乾いた秋の空気に乗って聞こえ
穏やかな秋晴れの休日は、温かい食べ物を求める人出で拉麺店の駐車場が混雑している
自転車に乗った子が神社の入り口で止まった
そのセミロングの子は
自転車の鍵を掛けると背負っていたバックパックを手に持ち替え
鳥居に向かい歩き出した
鳥居の前には、向かって右側には阿形(口を開いている)の無角の
左側には吽形(口を閉じている)の有角の胡魔狗(狛犬)が鎮座している
この胡魔狗、右側は名を「疾風(はやて)」といい左側は「隼(はやと)」と云う
セミロングの子が胡魔狗に近づくと
「疾風」の口が閉じ、眼がギョロッと一回転して周囲を見渡し
「隼」の角がピカッと閃光を放ち境内に結界が張られた
セミロングの子の眉間にズキッと軽い痛みが走り
薄っすらとサード・アイが開くと
その子は歩みを止めることなく結界をまたぎ境内に入った